ノルマに追われた日々と、「一番」になった瞬間
株式会社トゥモローリンク代表・渡邊真吾は、キャリアのスタートから一貫して人材業界に身を置いてきました。最初に飛び込んだのは、厳しい成果主義の営業現場。毎月の数字、重いノルマ、常に比較される成績表。プレッシャーとしんどさは大きく、「これをいつまで続けるのか」という不安もつきまとっていました。
それでも走り続ける中で、ある時「営業成績で一番」を経験します。クライアントに向き合い、試行錯誤しながら結果を出したことで、周囲から認められ、初めて強い自己肯定感を得られた瞬間でした。この体験から、「働くことには、人を根本から変える力がある」という実感が生まれます。一方で、自分が感じていたしんどさや葛藤を抱えたまま働いている人も多い現実に気づいていきます。
「痛み」の正体に気づいた、人と組織のギャップ
現場経験を重ねるほど、成果主義そのものよりも、「会社の志や存在意義が、現場のメンバーに届いていないこと」に大きな違和感を持つようになります。なぜこの会社は存在するのか。どんな未来をつくりたいのか。その物語が伝わっていないために、社員は「目の前のノルマをこなす人」になってしまう。ここに、人と組織の大きな「痛み」があると感じました。
自分自身も、数字だけを追っていた時期は「評価されているのに、どこか満たされない」という感覚を抱えていました。仕事を通じた自己承認はうれしい。けれど、「何のためにこの成果を出したいのか」が曖昧なままでは、本当の意味で前向きにはなれない。この葛藤こそが、後のキャリアの方向性を決める原点になっていきます。
採用・組織コンサルの道へ――「はたらく」を前向きにする挑戦
やがて渡邊は、採用支援や組織人事コンサルティングの領域へと舵を切ります。理由はシンプルで、「人と組織の痛みの根っこは、採用と職場づくりにある」と確信したからです。
単に人を集めるのではなく、「なぜこの会社なのか」「どんな未来を一緒につくるのか」を言語化し、共感できる人と出会う採用へ。そして、入社後もそのビジョンを日々の仕事とつなげ、一人ひとりの「Will(何がしたいのか)」を引き出す職場づくりへ。こうした実践を通して生まれたのが、トゥモローリンクのビジョン「はたらくがもっともっと前向きに」です。
働くことを、お金のためだけではなく、「自分の可能性に気づき、自己承認を得られるプロセス」に変える。そのために、同社は参加型未来プログラム「MEZAME」などを通じて、会社の歴史や志と、社員一人ひとりの物語を結びつける場づくりに取り組んでいます。
あなたの「痛み」をキャリアの材料に変える棚卸しワーク
渡邊のキャリアは、「しんどさ」や「違和感」から逃げずに向き合った結果、それを仕事そのものに変えたプロセスでもあります。同じように、自分の痛みをキャリアの材料に変えるために、次の3つの問いで棚卸ししてみてください。
1.これまでの仕事で、一番しんどかった場面は?
- どんな状況で、何に傷ついたのか
- 「本当はこうだったら良いのに」と感じた理想は何か
2. 一番「認められた」と感じた出来事は?
- 誰に、どんな言葉や評価をもらったのか
- その時、自分のどんな行動や価値観が発揮されていたのか
3.その2つに共通する、自分なりのテーマは?
- 「人が報われる瞬間を増やしたい」など、自分が強く反応するキーワード
- そのテーマを、次の職場や働き方でどう生かしたいか
この3ステップを言語化してみると、「自分が大切にしていること」や「関わりたい課題」が浮かび上がってきます。
面接で自分のストーリーを伝えるコツ
棚卸しした内容は、そのまま面接でのストーリーテリングに使えます。ポイントは次の3つです。
- 事実と感情をセットで話す「当時◯◯のノルマがあり、毎日不安だった」「評価は高かったが、どこかむなしかった」など、自分の内面も簡潔に添える。
- そこからの学びを明確にする「だからこそ、成果だけでなく意味を共有できる組織をつくりたいと思うようになった」など、痛みから導き出した気づきを言葉にする。
- 今後の挑戦につなげる「自分のこうした経験を、御社の◯◯という取り組みに生かしていきたい」と、相手の文脈と結びつけて締める。
「痛み」を抱えたままにしない働き方へ
キャリアの転機は、多くの場合「うまくいった瞬間」より、「しんどかった経験」から始まります。渡邊が成果主義の現場で感じた違和感を原動力に、「採用が未来を切り開き、職場環境が個人の成長を促す」というミッションにたどり着いたように、あなたの痛みも、次の仕事選びのコンパスになり得ます。
大切なのは、それをなかったことにしないこと。言語化し、テーマを見つけ、「自分は何のために働きたいのか」を一歩ずつ明らかにしていくことです。その先には、月曜日に少しだけ楽しみを感じられるような、「はたらくがもっともっと前向きに」なる日常が待っています。