「数字さえ出せばいい」から抜け出せなかった前職時代
新卒で入社したのは、人材紹介とSaaSを扱う営業会社でした。KPIは「架電件数・商談数・成約数」。評価の軸もボーナスも、すべて数字。20代後半でチームリーダーになり、月次目標は安定して達成。それでも、達成翌日にすぐ次月の数字を追い始めるサイクルに、どこか虚しさを感じていました。
クライアント企業の「採用の成功」ではなく、自社の「受注金額」が会話の主語になる。候補者一人ひとりのキャリアより、今期の達成率が優先される。成果で承認はされるのに、「自分の仕事が誰の何を良くしているのか」が見えず、心のどこかでブレーキを踏んでいる感覚が残っていました。
「働くがもっともっと前向きに」という言葉との出会い
転機になったのは、知人経由で聞いたトゥモローリンクの代表インタビューでした。「採用が未来を切り開き、職場環境が個人の成長を促す」という言葉に、営業として感じていた違和感が整理されていきました。
特に印象的だったのは、「働くは、お金のためだけではなく、自己承認の装置である」という考え方。自分自身、前職で数字を通じて初めて強く承認され、自己肯定感を得た経験がありました。ただ、それを自分だけのものにせず、組織全体の再現性として届ける仕事があると知ったとき、「売る」から「意味づけを一緒につくる」側に回る可能性を具体的にイメージし始めました。
入社1年目のプロジェクト変遷と、失敗から学んだ対話設計
トゥモローリンク入社後の1年は、「聞く力」との格闘でした。最初に関わったのは、離職率の高いサービス業のクライアント。導入したのは、参加型未来プログラム「MEZAME」。
当初、私は前職のクセで「課題仮説を素早く提示する」ことに意識が向きすぎていました。しかし、ある回でファシリテーションが空回りし、参加者から「結局、答えを教えに来た人に感じる」と率直なフィードバックを受けました。
そこから、「問いの立て方」と「沈黙に耐える時間」の設計を見直しました。答えを急がず、社員一人ひとりの「Will(何がしたいのか)」が自然とこぼれ出る順番をチームで何度も議論し、対話のプロセス自体をクライアントごとにカスタマイズするようになりました。
組織が変わる瞬間に立ち会った「意味」と「承認」の連鎖
忘れられないのは、ある中堅企業でのプロジェクトです。創業者の想いが年々薄れ、若手の離職が続いていた組織でした。研修の初回、社員からは「どうせまた一過性の施策でしょ」という空気が漂っていました。
そこで行ったのが、「なぜこの会社は存在するのか」をテーマにした経営層と現場メンバーの対話セッション。創業当時の苦労話だけでなく、「今、目の前のお客様にどんな価値を届けられているか」を一緒に再定義しました。
数カ月後、同じメンバーが「この仕事、意外と自分に合っているかもしれない」と語り始めたとき、表情が明らかに変わっていました。人が行動を変えるのは、目標数字だけではなく、「自分の役割に意味を感じたとき」なのだと、現場で腹落ちした瞬間でした。
「意味で人は動く」は、条件付きで本当だと思う理由
現場で多くの組織を見てきて、「意味で人は動く」は万能の魔法ではないと感じています。ただし、いくつかの条件が揃えば、強いドライバーになると実感しています。
- 意味が日々の業務レベルに翻訳されていること
- 対話を通じて、社員自身の「Will」と接続されていること
- 成果や行動が、きちんと言語化されて承認されること
この3つが揃うと、「やらされ感」だった施策が、自分ごととして再解釈され始めます。トゥモローリンクの仕事は、まさにその接続を設計し続ける営みだと感じています。
今の職場でできる「意味づけトレーニング」3ステップ
環境をいきなり変えなくても、今日からできる「意味づけトレーニング」はあります。
- ステップ1:自分の業務を3つに分解し、「その仕事が誰の何を良くしているか」を一行で書き出す
- ステップ2:週1回、同僚と「今週、意味を感じた瞬間」を5分だけ共有する
- ステップ3:月末に、自分が他者からもらった承認の言葉を振り返り、「どんな価値を見てもらえたか」をメモに残す
小さな習慣でも、仕事を「こなすタスク」から「価値を届ける行為」として再定義するきっかけになります。
キャリアを選び直すためのカルチャーチェック質問例
最後に、新しい環境を検討するときに、どの会社でも使える問いをいくつか紹介します。
- 「この会社が存在する理由を、一言で言うと何だと考えていますか?」
- 「最近、社員が一番成長したと感じたエピソードは何ですか?」
- 「成果以外で、どんな行動が承認される文化がありますか?」
- 「会社のビジョンと、現場の日常業務はどのように結びついていますか?」
こうした質問を通じて、自分が大切にしたい「意味」や「対話」が、その組織でどれだけ実装されているかを確かめていくことが、納得感のあるキャリア選択につながっていきます。