劣等感の塊だった20代が、仕事で「自己承認」を取り戻すまで
株式会社トゥモローリンク代表・渡邊真吾は、学生時代も社会人初期も「とりたてて秀でたところのない人間」だと感じていた。テストで一番になったこともない。野球もレギュラーに滑り込むのがやっと。社会人になってからも厳しいノルマに追われ、毎晩のように終電ギリギリまで働く日々。「日曜の夜が憂うつ」という感覚は、むしろ当たり前だった。
転機は、採用サイト運営大手・パーソルグループでの営業経験だ。求人広告営業として歴代最長の45カ月連続目標達成、新規顧客獲得数3年連続全国1位──数字だけを見れば華々しいが、本人にとって本質的だったのは「初めて他者から期待され、認められた」という感覚だった。
「あ、自分にも価値があるのかもしれない」。その小さな手応えが、自己承認の起点になった。渡邊はここで、働くことを「お金のための行為」から「自分の可能性を発見し、変わっていける装置」へと捉え直していく。
働く=自己変容装置、という仕事観
トゥモローリンクが掲げるビジョンは「はたらくがもっともっと前向きに」。その根底には、働くことを自己変容のプロセスと捉える視点がある。
日本では、国際比較でも「仕事へのエンゲージメント」が低いと言われる。渡邊は、その一因を「仕事に意味を見いだせないまま、数字や作業だけを追う構造」に見ている。逆に、成果主義の現場であっても燃え尽きずにいられたのは、「自分の成長」と「誰かの役に立てている実感」が結びついていたからだ。
この仕事観は、同社の組織づくりにも貫かれている。「人の可能性を信じ、一人ひとりと向き合うこと」「ヒエラルキーより対話を重視すること」。人生観の異なるメンバーが集まる前提に立ち、合わないと感じた相手ほど背景を知ろうとする。それを束ねるのが「北極星」としてのビジョンだ。
ビジョンを日常に落とし込む研修プログラム「MEZAME」
こうした思想を具体化したのが、参加型未来プログラム「MEZAME」である。テーマは、社員一人ひとりの「眠っている動機」を呼び覚まし、会社のビジョンと接続することだ。
プログラムでは、スキル研修ではなく対話を重ねる。「あなたは何がしたいのか(Will)」「なぜこの会社を選んだのか」といった問いを通じて、入社時には確かに存在していたはずの想いを言語化していく。そのうえで、経営者の志や会社の歴史・未来像と重ね合わせ、「自分の役割は何か」を再定義する。
導入企業では、「本音で話せるようになった」「一人で抱え込まず、助けを求められるようになった」といった変化が生まれている。売上や目の前の業務対応と同時並行で、「なぜこの会社が存在するのか」を対話することが、結果としてチーム力と生産性を高めている。
自分にとっての「前向きに働ける状態」を言語化する
この記事を読むあなた自身も、「前向きに働ける状態」を一度言語化してみてほしい。シンプルなワークシートとして、次の3つの問いを紙に書き出してみる。
- 1.これまでの仕事人生で「少し月曜が楽しみだった」時期はいつか。そのとき何が起きていたか。
- 2.逆に、日曜夜が最も憂うつだった時期はいつか。そのとき、何が欠けていたか。
- 3.1と2を踏まえて、「自分が前向きに働けるために、絶対に外せない条件」を3つ挙げる。
出てきた条件は、キャリアの軸そのものになる。「裁量がある」「フィードバックがもらえる」「価値観の近い仲間がいる」など、人によって答えは異なるはずだ。
転職活動で企業の“仕事観”を見抜く質問例
もし転職を検討しているなら、企業の仕事観を確かめる質問を用意しておきたい。例えば次のような問いが参考になる。
- ・御社で「前向きに働いている」と評価される人は、どんな行動をしている人ですか。
- ・最近、社員のモチベーションが上がった/下がった出来事には何がありますか。
- ・ビジョンやミッションが、直近のプロジェクトの意思決定にどう影響しましたか。
- ・上司との1on1や評価面談では、数字以外にどんなテーマを話しますか。
返ってきた答えの具体性や温度感から、その会社が「はたらく」をどう捉えているかが見えてくる。
月曜が少し楽しみになるために、できる一歩
トゥモローリンクが目指すのは、「明日会社に行くのがちょっと楽しみになる」状態を増やすことだ。それは特別な福利厚生ではなく、「仕事を通じて自分が変わっていける」という実感から生まれる。
組織側には、ビジョンを語り続けること、対話の場をつくること、一人ひとりの可能性を信じることが求められる。一方で個人も、自分にとっての前向きな働き方を言語化し、それに沿って環境を選び取り、関わり方をデザインしていく必要がある。
月曜を少しだけ楽しみにするための条件は、人の数だけ存在する。まずは、自分にとってのその条件を言葉にしてみることから、キャリアのアップデートは始まっていく。