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防災・安全×ものづくりで業界研究:ストレッチャーに変形する看板「サポートサイン」が示す新市場

ものづくり人材 , 公共デザイン , 安全衛生対策 , 感染症リスク対応 , 防災プロダクト

2026.03.10

看板メーカーが「防災・安全」に向かう理由

商店街や施設の前に必ずあるA型看板。その国内最多クラスの生産量を誇るのが、大阪府堺市の常磐精工株式会社です。同社は元々、アルミ製のスタンド看板やディスプレイ什器を得意としてきましたが、コロナ禍をきっかけに「防災・安全」分野へ大きく舵を切りました。

飛沫防止パーテーション、消毒液スタンドといった安全衛生用品に加え、平時は案内用の自立看板として使え、緊急時には担架・ストレッチャーに変形する「サポートサイン」を開発。看板メーカーならではのアルミ加工技術と、社会課題を結びつけた代表的な事例です。

コロナ禍が開いた「安全衛生×販促」の市場

コロナ禍で、店舗や病院、公共施設には「感染対策を見える化する什器」が一気に求められました。消毒液スタンドやパーテーションは、安全対策であると同時に「ここは安心して利用できる場所」というメッセージを伝えるツールでもあります。

常磐精工は、もともと人通りの導線や視認性を考えて看板を設計してきたメーカーです。このノウハウを生かし、「どこに置けば邪魔にならず、目に入りやすいか」「表示内容をどうすれば分かりやすいか」といった観点から、安全衛生用品を看板の延長線上のプロダクトとして捉えました。結果として、防災・安全と販促が融合した新しい市場が見えてきたといえます。

ストレッチャーに変形する看板「サポートサイン」が生まれるまで

常磐精工の強みは、自社工場で設計から材料加工・組立・出荷まで一貫して行えることです。NC切断機やミーリングマシンなどを駆使して、1台からでもオーダーメイドに対応できる体制が整っています。

「サポートサイン」は、災害時に「人を運ぶ手段が足りない」という課題から着想されました。平常時は案内看板として施設に常設されているものを、いざという時には担架に変形させることで、設置スペースを変えずに防災機能を持たせるコンセプトです。

アルミフレームの強度計算、折り畳み・展開機構の検証、日常のメンテナンス性など、多くの試作を重ねた結果、テレビや新聞でも取り上げられるヒット商品へと成長しました。ショールームでは試乗体験や変形方法のレクチャーも行い、「使える防災」を現場目線で支えています。

防災・安全×製造業の成長性と求められるスキル

人口減少や市場成熟が進むなかでも、「安全」「防災」「感染症対策」へのニーズは今後も続きます。特に、既存インフラや店舗設備を活かしながら、付加価値として防災機能を持たせるプロダクトは、官民問わず注目分野です。

この領域で求められるのは、単なる図面どおりのものづくりではなく、・利用シーンを具体的に想像できるユーザー視点・アルミなど素材特性を踏まえた設計力・安全基準や法規制への理解・企画から試作・検証までを回すプロジェクト思考といった複合的なスキルです。常磐精工がオリジナル断面のアルミフレームを開発し、看板以外の骨組みにも展開しているのは、その好例といえます。

学生・若手が今からできる学びとポートフォリオづくり

防災・安全×ものづくりの世界に関心があるなら、次のような取り組みが有効です。

  • 身近な施設の「案内表示」や「避難導線」を観察し、改善案をスケッチや図でまとめる
  • 大学や専門学校であれば、防災・公共デザイン系の授業やプロジェクトに積極参加する
  • 簡単なプロトタイピング(紙模型、3D CAD、3Dプリンタ等)で、アイデアを形にしてみる
  • 自治体の防災訓練やボランティアに参加し、現場での課題を体感する

こうしたアウトプットをポートフォリオとして整理しておくと、「社会課題をものづくりで解決する」という姿勢が具体的に伝わります。常磐精工のように、社員から商品アイデアを募ろうとする企業では、とくに評価される資質です。

防災ニーズを捉えた「次のものづくり」へ

常磐精工は、A型看板というニッチな分野で国内トップクラスの地位を築きながら、「サポートサイン」に代表される防災・安全分野へと領域を広げています。その背景には、「常に今、最高だと誇れるものを」というメーカーとしての矜持と、地域社会にとって意味のある存在でありたいという姿勢があります。

防災・安全×ものづくりは、単なるトレンドではなく、長期的に社会から求められるテーマです。看板から担架へと変形する一枚のフレームのように、既存の技術に新しい役割を与えられるかどうか。そこに次の時代の製造業の可能性が広がっています。