A型看板のニッチ市場で「国内最多クラス」を築いた理由
商店街やショッピングモールの入口に置かれたA型看板。その多くを支えているのが、大阪・堺で1967年からものづくりを続ける常磐精工です。折りたたみ可能な自立型看板に特化し、生産数は国内最多クラス。看板を「買う人生」を歩む限られたお客様から、繰り返し選ばれてきたことで、ニッチトップの地位を築いてきました。
創業当初は切削加工の下請けからスタートしましたが、二代目の決断で「自社ブランドを持つ看板メーカー」へ転身。アウトドア用品から自立型看板へと主力製品を変えながら、時代ごとのニーズに応えることで事業を拡大してきました。
品質とサービスで海外製と差別化するメーカー力
看板市場には、低価格な海外製品も多く存在します。その中で常磐精工が支持される理由は、「長く安心して使えること」を前提にした設計思想にあります。
- 耐久性を重視したアルミ製フレーム構造
- パーツ供給による修理・部品交換への対応
- 用途や設置環境に合わせた多彩なバリエーション
パネルスタンド、ポスタースタンド、ポールスタンド、消毒液スタンド、飛沫防止パーテーションなど、2,000種類以上のラインナップを自社で設計・製造。工事・施工を伴う大型サインではなく、「自立型のアルミ製看板・什器」に特化することで、品質と機能を磨き込んできました。
オリジナルアルミフレームと一貫生産体制
常磐精工の技術的な核となっているのが、自社開発のオリジナル断面アルミフレームです。NCボール盤、NC切断機、パネルソー、大型ミーリングマシンなどの設備を備えた自社工場で、設計から材料加工、組立、出荷までを一貫して行っています。
この体制により、年間3万台以上のスタンド看板を安定供給しつつ、1台からのオーダーメイドにも対応可能。看板枠専用機まで自社で持つことで、「既製品の大量生産」と「小ロットのカスタム」という、一見相反するニーズを両立させています。
三代目社長が描く「試作開発パートナー」への進化
2024年に三代目として代表取締役に就任した喜井翔太郎氏は、「看板を作って売るメーカー」から一歩進み、「試作開発を支援するパートナー」への進化を掲げています。
自社のオリジナルアルミフレームをコア技術として、スタートアップやセカンドスタートアップからの相談に対応。研究施設向けクリーンルームの骨組みや、防災ポシェットの陳列什器など、従来の看板の枠を超えたプロジェクトも動き始めています。
社内では、これまで限られたメンバーで行っていた商品開発を、若手を含む従業員全体に開いていく方針です。「自分が考えた製品が世に出る」体験を増やすことで、ものづくりのやりがいを実感できる環境づくりを進めています。
地域に開かれた工場と「MAKE THE BEST」の姿勢
常磐精工は、ショールームや工場見学、ワークショップを通じて地域にも開かれた企業です。ショールームでは約50種類の看板を展示し、実際に触れながらポスター交換方法やLEDの明るさを体感できます。TVや新聞で話題となった、ストレッチャーに変形する「サポートサイン」の試乗体験も可能です。
スローガンは “MAKE THE BEST~常に「今」、最高だと誇れるものを~”。ベアリング、アウトドア用品、看板と取り扱う製品は変わっても、「その時代にできる最高のものづくりを追求する」という姿勢は一貫しています。
ニッチトップ企業でキャリアを築くうえでのポイント
ニッチトップメーカーで働く魅力は、「市場は狭くても、必要とする人にはなくてはならない存在」に関わる実感を得られることです。製造業で自分の市場価値を高めたい人にとって、次のような視点が重要になります。
- 特定分野(自立型看板、アルミ構造体など)での専門性を深める
- 設計~製造~ユーザー利用まで、製品ライフサイクル全体を理解する
- スタートアップとの共創のように、技術を「課題解決」に結びつける発想を持つ
- 地域や社会とのつながりを意識し、自社製品の存在意義を言語化できるようにする
常磐精工のようなニッチトップ企業では、一人ひとりの工夫や提案が製品や仕組みに反映されやすく、ものづくりの現場で専門性と当事者意識を育てていくことができます。「目立たないが、なくてはならないもの」を支えるメーカーで、自分の技術やアイデアを磨き続けたい人にとって、学びの多いフィールドだと言えるでしょう。