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“全員が品質研究員”ってほんと?クレーム多発からV字回復した昭和製線の舞台裏と、そこで働くおもしろさ

クレーム対応 , 全員参加の改善 , 品質改善 , 真因究明 , 製造現場の工夫

2026.03.31

「船が沈みかけていた」現場で、何が起きていたのか

大阪府富田林市に本社を構える昭和製線株式会社は、ジャンパー線や鉛フリーはんだメッキ銅線など、電子部品・電線の“中身”をつくる専門メーカーです。創業は昭和31年。長年培ってきた同線事業を強みにしてきましたが、数年前、状況は一変しました。

顧客からのクレームが増え、手直しや選別作業に現場は追われ、利益は目に見えて圧迫される。代表の廣瀬康輔氏が「船が沈みかけていた」と振り返るほど、会社全体が疲弊していました。

当時よくあったのが、「メッキ表面に微細な汚れ」「通電不良のリスクがあるレベルのムラ」といった、一見すると“わかりにくい”不良です。計測器の数値上は基準内でも、顧客の製造ラインに入ればトラブルの原因になり得る。電子部品の要求レベルが上がるなか、「これまで通り」では通用しなくなっていたのです。

全員が“品質研究員”という発想へのシフト

昭和製線が取り戻したのは、「全社員が品質向上についての研究員である」という創業時からの精神でした。品質管理部だけ、ベテランだけが品質を考えるのではなく、製造、営業、事務まで含めて「自分の仕事が品質にどうつながるか」を見直す取り組みが始まりました。

キーワードになったのが、“真因”まで掘り下げる姿勢です。例えば、ある顧客で「ジャンパー線のはんだ濡れ性が悪い」というクレームが起きた際、表面的には「メッキ不良」の一言で片づけられそうな事象でした。

しかし現場では、工程ごとのサンプル採取と顕微鏡観察、洗浄条件の記録の洗い出しを徹底。結果、原因はメッキ浴そのものではなく、「洗浄槽のフィルター交換頻度」と「ライン停止時の乾燥状態」にあることが判明しました。対策は、フィルター管理の基準見直しと、停止時のワーク保管ルール変更。以降、同じクレームはほぼゼロになりました。

クレームを“資産”に変える現場の工夫

こうした成功事例が積み重なると、クレームは「怒られるもの」から「改善テーマの宝庫」へと認識が変わっていきます。昭和製線では、クレームが発生すると、関係部署の担当者が集まり、工程フローを壁一面に貼り出して議論します。

「この工程、洗浄後の滞留時間が長くないか」「ここだけ記録が残っていない」といった小さな違和感を、職種や年次を問わず遠慮なく出し合うのが特徴です。ときには、入社1年目の社員の一言が真因究明の突破口になることもあります。

重要なのは、「誰かのミス探し」ではなく、「二度と起こさない仕組みづくり」に焦点を当てるスタンスです。原因を個人ではなく工程やルールに求めることで、発言しやすい雰囲気を保ちながら改善のスピードを上げています。

入社後すぐに真似できる“品質研究員”の行動

とはいえ、「品質研究員」と聞くと、自分には専門知識がないから難しそうだと感じるかもしれません。昭和製線の現場で実際に行われているのは、決して特別なことばかりではありません。

1. 小さな変化でも必ず共有する

例えば、「今日はいつもよりワイヤーが通しにくい」「洗浄後の水切れが悪い気がする」といった微小な変化でも、班長や上司にすぐ共有するルールがあります。数値に表れない“違和感”ほど、早期発見のカギになるからです。

2. 気づきをメモ → 提案まで落とし込む

現場には、作業台の横に小さなメモ用紙とホルダーが用意されています。「こうすれば汚れに気づきやすいのでは」「この順番ならミスが減るのでは」と感じたことを、まずはメモ。その後のミーティングで、簡単なスケッチや写真とともに提案します。

採用された改善案は、3S活動(整理・整頓・清掃)や標準作業に組み込まれ、全社に横展開されます。「メモ一枚が会社のルールになる」という実感が、現場のモチベーションにもつながっています。

品質に向き合うことで得られる“仕事のおもしろさ”

クレーム多発の時期を乗り越えた昭和製線は、現在、東南アジアをはじめとする海外市場への輸出も拡大しています。武器になっているのは、価格ではなく「日本製ならではの品質」と「約束を守る信頼性」です。

自分たちが突き詰めてきた品質改善の成果が、海外の電子部品メーカーや電線メーカーで評価される。そのフィードバックが再び社内の改善に生かされる。こうした好循環の中で、社員一人ひとりは「自分の仕事が世界中の製品の一部になっている」という実感を持つようになりました。

さらに近年では、太陽光パネルのアップサイクル事業にも挑戦し、ホワイトボードやテーブル、ベンチ「そらいす」など、新しい製品づくりにも取り組んでいます。本業で磨いた材料・加工技術と、品質にこだわる文化が、新規事業のベースにもなっています。

「経営にゴールはない」と語る廣瀬氏のもと、昭和製線はこれからも、同線事業という根幹を大切にしながら、新しい挑戦を続けていきます。その土台となるのが、「全員が品質研究員」という考え方です。日々の小さな気づきと改善が、会社をV字回復させ、次の成長を生み出す――そのプロセス自体が、この職場で働く大きなおもしろさになっています。