20名規模の製造業で、「職種の枠」を超えて働く
大阪府富田林市に本社を置く昭和製線株式会社は、ジャンパー線や鉛フリーはんだメッキ銅線など、電子部品・電線の中核となる導体加工を行うメーカーです。従業員は20名規模ですが、その小ささこそが「多能工」として広く深く成長できる環境を生んでいます。
製造オペレーター、設備保全、品質改善、さらには太陽光パネルのアップサイクルといった新規事業まで。配属部署に縛られず、会社全体の仕事を少しずつ横断していくのが昭和製線らしいキャリアの特徴です。
入社1年目:製造現場で「基礎体力」をつける
実在の若手社員Aさん(中途入社・製造職)のケースをもとに、成長のステップを見てみましょう。入社1年目の主な役割は、銅線の伸線やメッキ工程といった製造実務です。
- 伸線機・メッキラインのオペレーション
- 寸法・外観などの基本的な品質チェック
- 日々の3S(整理・整頓・清掃)活動への参加
この段階で重視されるのは、「決められた条件を正しく守る力」と「変化に気づく観察眼」です。昭和製線では「全社員が品質向上についての研究員」という創業時からの考え方があり、1年目から不具合の兆しを現場でつかむ視点を繰り返し求められます。
入社3年目:設備保全と改善提案で「原因に迫る」
2~3年目になると、単に機械を動かすだけでなく「なぜこの品質になるのか」を考える役割が増えていきます。Aさんも、設備トラブルや不良発生時の原因調査に関わるようになりました。
- 洗浄不良やメッキムラなどの不具合の原因分析
- 設備メンテナンスの計画作成・実施への参加
- 作業手順書の見直しや改善提案
昭和製線では、過去に品質クレームと真剣に向き合い、表面洗浄のわずかな甘さまで徹底して洗い出した経験があります。その蓄積されたノウハウを学びつつ、自分なりの仮説を立てて設備や条件を変えてみる「研究員的なスタンス」が、3年目前後から求められるようになります。
海外向け輸出プロジェクトに関わるまで
2014年から始まった東南アジア向けの銅線輸出は、昭和製線の成長を支える柱の一つです。Aさんがこのプロジェクトに関わり始めたのは、入社4~5年目頃でした。
- 輸出向けロットの立ち上げ時の試作・評価
- 海外顧客からの品質要件の読み込みと条件出し
- 展示会サンプルの製作や技術的な説明資料の作成補助
海外向け案件では、「日本製だからこそ求められるレベル」が一段階上がります。図面には現れないニーズを想定しながら、安定した品質を出す条件を探る経験は、多能工としての視野をさらに広げるきっかけになります。
太陽光パネルのアップサイクル・万博案件へのステップ
最近では、使用済み太陽光パネルをホワイトボードやテーブル、ベンチ型の小型発電所などに生まれ変わらせるアップサイクル事業にも挑戦しています。大阪・関西万博会場内に設置された「そらいす」ベンチもその一例です。
こうした新規事業には、製造一筋だけでなく、設備や電気の知識、顧客とのコミュニケーション力など、多面的なスキルが求められます。Aさんは次のような形で関わりました。
- パネルの電気的特性・安全性を確認するための測定補助
- ベンチやテーブルとして使用することを想定した耐久性検討
- 万博会場での運用状況を踏まえた改良点のフィードバック
「とりあえずやってみる」という同社のスタイルもあり、肩書に関係なく、アイデアや改善提案を出してプロトタイプづくりに参加できる点が、小さな会社ならではの面白さといえます。
入社前に準備しておくと強みになる経験・学び方
多能工としてキャリアを広げたい人にとって、入社前から意識しておくと役立つポイントは次の通りです。
- ものづくりの経験:DIY、ロボット制作、3Dプリンタなど、手を動かして試行錯誤した経験
- 原因を考える習慣:なぜ壊れたのか、なぜうまくいったのかをメモに残すクセ
- 基礎的な理系知識:電気・機械の超入門レベルでも、興味を持って学んでおくこと
- コミュニケーション力:自分の仮説や違和感を言葉で伝える練習(プレゼンよりも日常会話の質)
特別な資格よりも、「学び続ける姿勢」と「小さな改善を楽しめる感覚」があれば、現場での経験を通じて専門性は自然と広がっていきます。
職種より「成長の幅」を重視したい人へ
昭和製線のような少人数の製造業では、一つの職種にとどまらず、製造・設備保全・品質・海外案件・新規事業を横断して関わるチャンスがあります。決められたレールに沿うより、自分で仕事の幅を広げていきたい人にとって、多能工スタイルの働き方は大きな可能性を秘めています。
品質に向き合いながら、時代の変化に合わせて事業を進化させていく昭和製線の取り組みは、「小さな会社だからこそできるキャリアのつくり方」の一つのモデルケースと言えるでしょう。