銅線メーカーがなぜ太陽光パネルに挑むのか
大阪府富田林市に本社を置く昭和製線株式会社は、ジャンパー線や鉛フリーはんだメッキ銅線などを手がける創業100年超の銅線メーカーです。電子基板や電線用導体など“電気を流す銅線”の専門家である同社が、いま力を入れているのが「太陽光パネルのアップサイクル」。大阪・関西万博会場に設置されたアップサイクル太陽光ベンチ「そらいす」は、その象徴的なプロジェクトです。
背景にあるのは、FIT(固定価格買取制度)の終了に伴い、まだ発電できるにもかかわらず大量の太陽光パネルが廃棄されるという社会課題です。鉛はんだが使われたパネルも多く、産業廃棄物としての扱いも重い。そこで昭和製線は、「パネルを単にリユースするのではなく、まったく新しい用途にアップサイクルする」方向に舵を切りました。
万博ベンチ「そらいす」ができるまで
「そらいす」は、メガソーラーから取り外されたパネルを屋根として再利用したベンチです。日差しを避けて休めるだけでなく、スマートフォンなどを充電できる小さな発電所として機能し、熱中症対策とCO₂削減の両方に貢献します。
開発の出発点は「捨てられるパネルを、街中で役立つインフラに変えられないか」という素朴な問いでした。社長の構想をもとに、現場メンバーが「サイズ・重量」「発電量」「配線ルート」「安全性」といった条件を洗い出し、試作を繰り返しながら形にしていきます。万博会場に設置して終わりではなく、会期中もSNSの声や利用状況をもとに、早朝に現地で改良を続ける「動きながら学ぶ」スタイルも特徴です。
ホワイトボードから卓球台まで。実証実験の裏側
昭和製線が行っているアップサイクルは、「そらいす」だけにとどまりません。たとえば、以下のようなプロトタイプが社内外でテストされています。
- 平時は会議室のホワイトボード、非常時は電源になる「発電ホワイトボード」
- 屋外イベントで使える「発電テーブル」
- 遊びながら再エネを身近に感じられる「発電卓球台」
これらは、最初から完成イメージが固まっていたわけではなく、「とりあえずやってみる」文化から生まれました。小ロット生産に強い会社規模だからこそ、現場発のアイデアを試作しやすいのも同社の特徴です。
製造職・技術職でも“アイデア段階”から関われる
昭和製線では、「全社員が品質向上についての研究員である」という創業時からの精神を、新規事業にも広げています。製造職・技術職だからといって、図面通りに作るだけではありません。
「そらいす」のような案件では、社長が方向性を示したあと、現場メンバーが次のような役割で関わっていきます。
- 製造担当:廃パネルの状態を見て、加工しやすい構造や固定方法を提案
- 技術担当:必要な発電量や配線仕様を計算し、安全基準を踏まえて設計
- 品質・改善担当:屋外利用に耐える耐久性や、メンテナンス性を検証
試作段階では、「この配線だとメンテナンスしにくい」「ここにコネクタを移せば作業時間が短縮できる」といった現場からのフィードバックが即座に設計に反映されます。役職や担当にかかわらず、「自分ごととして考える人」がプロジェクトを前に進めていく文化です。
自分ならどんなアップサイクルを提案するか
昭和製線が大事にしているのは、人間力と主体性です。応募を検討する段階で、「自分ならどんなアップサイクルを提案するか」を一度考えてみると、入社後のイメージが具体的になります。
アイデアのヒントとしては、次の3つの視点があります。
- 「どこに置くか」:学校、公園、商店街、災害時拠点など
- 「誰が使うか」:子ども、高齢者、観光客、テレワーカーなど
- 「どんな価値を出すか」:日よけ、学びの場、遊び場、防災インフラなど
例えば、「通学路沿いのバス停に、夜間の足元を照らす発電ベンチを」「地域イベントで使う発電ステージパネルを」といった具合に、身近な風景と組み合わせて発想してみると、現場で活きるアイデアにつながりやすくなります。
“捨てられるはずの太陽光パネルに、もう一度役割を与える”。銅線メーカーとして培ってきた技術を土台に、社会課題に向き合いながら、新しいものづくりに挑戦していく。そのプロセスのなかには、製造・技術の現場から新規事業に関わりたい人にとって、多くのチャンスが広がっています。