「伸びる業界じゃないと思ってました」からのスタート
大阪・富田林市にある昭和製線株式会社は、ジャンパー線やはんだメッキ銅線など、電子部品や電線の“中身”をつくる会社です。創業は1920年の平野電線製造所までさかのぼり、戦後の清算を経て1956年に昭和製線として再スタート。いまは創業約100年、昭和製線としても約70年の老舗ですが、4代目社長・廣瀬康輔さんの本音はこうでした。
「電線の事業がこれから伸びるとは正直思っていなかったので、跡を継ぐつもりはなかったんです」
そんな廣瀬さんが戻る決意をしたのは、「自分が食べてこられたのはこの会社のおかげ」「社員一人ひとりに生活がある」と気づいたから。家業だからではなく、「ちゃんと考える人が必要だ」と思って選んだ4代目でした。
沈みかけた“船”と、クレームだらけの毎日
2004年に入社した当時、昭和製線はいわゆる「しんどい時期」。出荷量も利益も下がり続け、クレームは増える一方。設備は古くなり、お客様の品質基準は上がっているのに、会社がついていけていなかったといいます。
廣瀬さんは当時を「船にたとえると、ほぼ沈みかけていた」と表現します。注文は減っているのに、毎年のように値下げ要請。応じ続けた結果、気づけば「このままだと沈む」ところまで来ていたそうです。
品質日本一レベルを目指す、原因究明の“しつこさ”
立て直しの第一歩は、とにかく品質。表面コーティング前の洗浄不足など、クレームの原因を徹底的に洗い出し、「なぜ汚れが残るのか」を工程ごとに深掘り。原因がわかるまで、とにかく原因調査に時間を使う方針に振り切りました。
もともと昭和製線には「全社員が品質向上についての研究員である」という創業以来の精神があります。その“研究員マインド”をもう一度呼び起こし、3S活動や改善活動を地道に続けた結果、クレームは徐々に減少。「品質日本一レベルを目指す」という自信と目標が、現場にも共有されていきました。
展示会で知った「日本製の価値」から、海外展開へ
経営的に本当に苦しかった2014年、東京ビッグサイトの展示会にブースを出したことが転機になります。売るモノも決めず、自社の銅線をただ並べていただけ。それが、海外バイヤーの目に留まりました。
「これ、自分の国で買えるか?」「日本製が欲しい。自国の製品は信用できない」そう言われ、試しに東南アジアでの販売にチャレンジ。意外にも現地価格と比べて十分勝負でき、輸出が一気に伸びたといいます。
その後、東南アジア向けの銅線輸出は10年近く安定して続き、沈みかけていた船は立て直しへ。いまはさらに西のインド市場も見据え、「現地生産もありうる」と可能性を探っています。
20人規模だからこそできる「とりあえずやってみる」
従業員数は約20名。20代から70代まで幅広いメンバーと外国人実習生が、銅線の伸線・メッキ・より線加工を支えています。この規模ならではの強みが、「とりあえずやってみる」が本当にできること。
その象徴が、最近力を入れている太陽光パネルのアップサイクル事業です。FIT終了に伴う大量廃棄問題に着目し、「捨てられるパネルを減らす」方向から事業化を模索。ホワイトボード兼発電パネル、テーブル、卓球台など、用途を変えながら実験を続けています。
大阪・関西万博の会場には、アップサイクルパネルを屋根に使ったベンチ「そらいす」を設置。暑さ対策と充電スポットを兼ね備えた“超小型発電所”として、半年間リアルなフィードバックを集めている最中です。
どんな社長と働くことになるのか
廣瀬さんが社員に一番求めているのは、「人間力」だと言います。昭和製線の定義では「相手を思いやる言動を通じて、周囲に好影響を与える力」。仕事を「他人事」としてこなすのではなく、
- 今やっていることは、お客様にとって本当に良いか?
- 自分がお客様なら、どうしてほしいか?
と、自分ごととして考える人を歓迎しています。
そのために社長が重視しているのは、環境づくりとポジティブな声かけ。前向きな言葉が飛び交う職場で、自分で考え、試して、改善する。そのプロセスを「失敗してもいいからやってみよう」と後押しするスタイルです。
社長と話すときに聞いてみてほしい3つの質問
もし昭和製線に興味を持ったら、面談や面接のときに、こんな質問をぶつけてみると会社のリアルが見えやすくなります。
- 最近1~2年で「一番うまくいかなかったチャレンジ」と、それをどう活かしたか教えてください。
- 若手が自分から提案して動いた事例で、「これは良かった」と思うものはありますか。
- これから3~5年、本業(銅線事業)と新規事業(太陽光アップサイクル)をどうバランスさせていきたいですか。
数字や事業計画だけでなく、「どんな価値観のトップと一緒に働くのか」。そこまで想像しながら会社を選ぶと、入社後のギャップはぐっと減ります。100年続く老舗が、20人のチームで「とりあえずやってみる」を続けている。その現場感を、ぜひ自分の目で確かめてみてください。