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【ビフォーアフター公開】1点のバッグがよみがえるまで|レザーリペア職人の判断と思考プロセスを追体験

ダメージ診断 , レザーリペア技術 , 職人の観察眼 , 色補正とステッチ , 革バッグ修理

2026.06.01

1点のバッグに向き合うとき、職人はまず何を見るのか

テーブルに置かれたのは、角がすり減り、持ち手がくたびれたレザーバッグ。職人が最初にするのは「いきなり直す」ことではなく、静かな観察です。革の種類、厚み、コシ、表面の加工(ツヤの有無、型押しの有無)、縫い方や金具の付き方…。
「どんなふうに長年使われてきたのか」「どこに一番負荷がかかっているのか」を読み取りながら、頭の中ではすでに複数の修理パターンが組み立てられています。

素材チェックとダメージ診断:原因を推理する時間

次に行うのが、素材とダメージの「診断」です。同じ破れでも、原因が違えば直し方も変わります。例えば、
・経年による乾燥で、革そのものが脆くなっている
・重い荷物を入れ続けたことで、縫い目だけが限界を迎えている
・保管環境が悪く、カビや色ヤケが進行している
といった具合です。レザーアートでは、この時点で「直すだけで本当にまた安心して使えるか」「見えない部分の補強が必要か」までセットで考えていきます。

修理プランを組み立てる:段取りは逆算から生まれる

診断が終わったら、職人はゴールから逆算して段取りを決めます。
・縫い直しが必要な箇所はどこか
・芯材(バッグの形を支えるパーツ)を入れ替えるべきか
・色補正は部分か全体か
・金具やファスナーをどう扱うか
などを整理し、「分解→補強→縫製→色・仕上げ」という流れを具体的な手順に落とし込みます。ここで重要なのは、オリジナルのデザインやブランドらしさを崩さないこと。あくまで「そっと支える」修理を目指します。

色と糸を選ぶ:どこを直したか分からない仕上がりへ

続いて、表には出にくいけれど、仕上がりを大きく左右するのが「色」と「糸」の選択です。革は一見シンプルな黒や茶でも、実際には複数の色が混じり合った奥行きがあります。そのため、塗料を一滴ずつ混ぜ、光の当たり方も確認しながら色を近づけていきます。
糸も同様で、色・太さ・ツヤ感を合わせることで、ステッチが浮かずに自然になじみます。この段階からすでに、完成図とのズレをミリ単位で詰めていきます。

ミニ診断ワーク:あなたの革小物も「職人目線」で見てみる

手元にある革のキーケースや財布を、職人になったつもりで観察してみてください。
1. 一番ダメージが出ているのはどこか(角・折り曲げ部分・持ち手など)
2.その原因は?(擦れ・乾燥・重さ・水濡れなど)
3. 自分なら何を優先して直すか(補強・クリーニング・色直しなど)
と順番に考えると、「ただ古くなった」ではなく、「こう使われてきたから、こう傷んだ」というストーリーが見えてきます。職人の仕事は、このストーリーを読み解き、未来の使われ方まで想像することでもあります。

ビフォーアフターから読み解く、仕上げの微調整

実際のビフォー写真には、角の色ハゲや持ち手の黒ずみ、小さなひび割れが写っています。アフターではそれらが目立たなくなっていますが、「新品同様」にしすぎていないのもポイントです。
あえてツヤを抑えたり、わずかに残した色ムラをなじませたりすることで、そのバッグだけが持つ時間の深みを損なわないように仕上げます。「どこを直したか分からないけれど、全体が自然に若返った」状態を目指す、この最後の微調整こそ、レザーアートの職人たちが最も神経を使う工程です。