プラモデル好きの20代が「職人の現場」に飛び込んだ理由
彼がレザーアートを知ったきっかけは、「好きな細かい作業を一生の仕事にしたい」という思いからでした。前職はまったくの異業種。休日にプラモデルやDIYを楽しむ程度で、革の知識もブランドの常識もゼロ。それでも、使い込まれたバッグが職人の手でよみがえる様子を見て、「ここなら、自分の手で誰かの大切なものを未来につなげる仕事ができる」と確信。創業1961年、約100人の職人が集まる“修理専門集団”というスケールにも惹かれ、「未経験歓迎」の募集に思い切って応募しました。
入社前の不安と、面接で聞いてホッとしたこと
いちばんの不安は「本当に未経験でやっていけるのか」という点。面接では、過去の職歴よりも、プラモデルやDIYの作品写真、細かな作業が好きな理由を詳しく聞かれました。採用担当からは「技術は現場でいくらでも教えられるけれど、コツコツ続けられるかどうかが大事」と明言され、肩の力が抜けたそうです。また、「納期と約束を守る文化」「1点ごとに毎回違う仕事になる」といった話を聞き、プレッシャーはありつつも、単調ではない成長環境に魅力を感じたと振り返ります。
最初の1年で任されたことと、徹底して身につけた基礎
1年目は、いきなり難しい修理を任されるわけではありません。彼が担当したのは、検品補助・簡単な補修・色作業の下準備など、「仕上がりを支える基礎工程」。先輩の指示をメモしながら、革の種類・縫い目のピッチ・金具の構造などをひたすら観察する日々でした。ポイントは、
・「なぜこの手順なのか」を必ず質問する
・同じ作業を3回続けて再現できるまで反復する
・品質チェックの視点を早い段階から覚える
という3つ。ここで身につけた“見る目”が、2年目以降の応用力につながっていきます。
失敗からの立て直し方と、先輩からの本音フィードバック
転機になったのは、2年目に経験した「色合わせのミス」。ごく小さな色ムラでしたが、先輩のチェックでストップがかかりました。厳しく指摘される覚悟をしていたところ、「やり直せるうちに気づけたのはラッキー。大事なのは原因の言語化だよ」と、ミスの背景を一緒に分解してくれたと言います。以降は、
・作業前に「完成イメージ」を先輩とすり合わせる
・不安があれば早めに相談する
・自分の失敗メモを共有し、チームで再発防止
というスタイルに。レザーアートの「失敗が許されない」緊張感はありつつも、個人を責めるのではなく、品質を守るために対話する文化を実感したと語ります。
3年目、一人前の職人として任されるようになるまで
3年目の彼が主に担当しているのは、小〜中規模の修理案件。扱うのは、海外有名ブランドのバッグや革小物が中心です。1点ごとに状態も原因も違うため、「毎回が初めての案件」の連続ですが、
・破損の原因を推測し、最適な工程を組み立てる
・ブランドの雰囲気を崩さない色・質感を再現する
・納期を守りつつ、どこを直したかわからない自然な仕上がりを目指す
といった判断を、自分の責任で行うように。納品後、取引先から「お客様がとても喜んでいた」と聞く瞬間が、何よりのモチベーションになっているそうです。
面接前にやっておくと有利な「趣味の見せ方」と観察力トレーニング
未経験から挑戦したい人に、彼が勧める準備は2つ。
1. 趣味の写真を“ポートフォリオ化”する
・プラモデルやDIY作品を、作業前・途中・完成の3段階で撮る
・こだわったポイント、失敗と修正プロセスを一言メモにしておく
2. 観察力を鍛えるトレーニング
・毎日使うバッグや靴の「縫い目」「コバ」「金具の傷み」を10秒だけ観察
・気づいた変化をスマホメモに残し、理由を推測する
こうした小さな習慣が、「細部に気づく目」と「仕事への向き合い方」を伝える材料になり、「自分にも一歩踏み出せるかもしれない」と感じられるはずです。