20代で「一生モノの技術」を身につけるという考え方
井上社長が考える「一生モノの技術」とは、トレンドに左右されない“本質的な手仕事”です。バッグやシューズの構造を理解し、素材のクセを見抜き、最適な修理方法を選ぶ。この一連の判断力と手さばきは、一度身につけば年齢を重ねても価値が落ちません。20代は、手と目と頭を徹底的に鍛えられる時期。スピードより「正確さ」「丁寧さ」を優先して積み重ねることで、30代以降も通用する職人としての土台ができます。
レザーアートのミッションと「価値あるものを未来につなぐ」仕事
レザーアートのミッションは「価値あるものを未来につなぐ」こと。単に壊れた部分を直すのではなく、オーナーの思い出やブランドの誇り、そのアイテムに込められたストーリーごと守る仕事です。目指すのは「どこを修理したかわからない」自然な仕上がり。ユーザーの「もう一度使いたい」を叶え、販売店やブランドの信頼も回復する。モノだけでなく、目に見えない“信用”まで修復することを、自分たちの存在意義と位置づけています。
リペア業界の将来性と、流行に流されない安定性
リペアは、景気やトレンドに左右されにくい「直す文化」に根ざしたビジネスです。大量生産・大量消費から「いいものを長く使う」流れに変わる中で、レザーアートには国内外の有名ブランドや百貨店から安定して依頼が届いています。創業は1961年、これまで手がけたリペアは500万点以上。特定のブランドに依存せず、多様な取引先を持つことで、職人が技術の研鑽に集中できる環境が整っています。
約束を守る文化と「レザーアート品質」ができるまで
レザーアートの根っこにあるのは「納期・約束を絶対に守る」という創業時からの教えです。だからこそ、技術と同じくらい重視しているのが品質管理。色むらや縫製、メッキの状態確認はもちろん、糸くずやハギレが残っていないかまで徹底的にチェックします。東京・大阪あわせて約100人の職人が、1点ずつ状態の違うアイテムと向き合い、「来たときよりも強く、美しく」を合言葉に、ブランドの品格を損なわない仕上がりを追求しています。
新卒に期待していることは「完璧な技術」より3つの姿勢
井上社長が新卒に求めているのは、入社時点の完璧な技術ではありません。大切なのは、
・細かい作業を投げ出さない粘り強さ
・お客様の大切な品を扱う誠実さ
・納期を意識した自己管理力
の3つの姿勢です。レザーアートの仕事は「毎日が初めての案件」。だからこそ、わからないことを放置せず「どうすれば直せるか」を考え抜ける人ほど伸びます。技術は、日々の仕事と先輩からの学びの中で確実に育てていけます。
学生のうちにやっておくと伸びやすい準備① 観察力トレーニング
まずおすすめなのが「観察するクセ」をつけることです。街中で見かけるバッグやシューズを、
・どんな素材か
・どこに負荷がかかりそうか
・どんな縫い方・パーツ構成か
といった視点で眺めてみてください。自分の持ち物でもOKです。「もし壊れたら、どこをどう直すか?」を想像する習慣は、入社後のダメージ原因の見立てに直結します。絵や写真をよく見る人は、その目の使い方を立体物に広げていくイメージです。
準備② 道具の手入れ習慣と、準備③作品のポートフォリオ化
次に、今使っているハサミ・カッター・筆などの「道具の手入れ」を日常化してみてください。
・使ったら元の場所に戻す
・定期的に刃を研ぐ、汚れを落とす
この地味な習慣が、現場での信頼につながります。また、学生時代の制作物や作品は、写真やメモで必ず残し、1冊のポートフォリオにまとめておくと、自分の成長を客観的に振り返ることができます。「時間をかけて一つを仕上げた経験」は、そのままレザーアートでの仕事の強みになります。