工場検品・コールセンターから「手を動かす仕事」へ
インタビューの主人公・Aさん(30代前半男性)は、前職で工場の検品とコールセンターを経験しました。検品では、流れてくる製品のキズや汚れをひたすらチェック。コールセンターでは、マニュアルに沿って正確に対応することが求められました。「どちらも悪くない仕事でしたが、自分の手を使って“形に残るもの”をつくりたい思いが強くなった」と振り返ります。そんな時に出合ったのが、革製品の修理・復元を専門とする株式会社レザーアート。世界のトップブランド製品を支える“職人集団”というキーワードに強く惹かれたと言います。
プラモデル・ジオラマ・靴磨きが「適性」として評価された理由
Aさんは学生時代からプラモデルやジオラマづくりが好きで、社会人になってからは靴磨きも趣味に。細かいパーツの組み立て、塗装のムラを抑える筆さばき、革靴の鏡面磨きなど、コツコツと集中する作業が得意でした。面接では、これらの趣味の写真をタブレットで見せながら、「説明書通りに作るだけでなく、どうしたら実物っぽく見えるかいつも考えています」と話したそうです。採用担当者からは「観察力と再現力は、レザーリペアでも大きな武器になる」と高く評価され、未経験ながら職人候補としての入社が決まりました。
入社〜3か月:ひたすら「基本」と向き合う下積み期間
入社直後の3か月で任されたのは、クリーニングや簡単な補色、検品補助などの基礎作業。最初の1か月は、先輩が直したバッグの糸くずやハギレ残りのチェック、色ムラの有無を確認する品質管理の補助が中心でした。「どこを直したかわからない仕上がり」を目指す会社だからこそ、微細なキズや色の違いも見落とさない視点が求められます。Aさんは「プラモデルの塗装で、わずかな色の違いが気になって塗り直していた癖が、そのまま活かせた」と語ります。毎日数十点を見比べる中で、革質やブランドごとの作りの違いも少しずつ掴んでいきました。
3か月〜1年:色補正・縫製にも挑戦し、職人として自覚が芽生える
3か月を過ぎた頃から、先輩の監督のもとで小さなキズの補修や部分的な色補正を担当。半年後には、持ち手の簡単な縫い直しや、内装のホツレ修理にもチャレンジするようになります。「最初は手が震えるほど緊張しましたが、先輩が“ここまでなら任せられる”と線を引いてくれるので、怖さよりも成長実感が勝った」とAさん。1年目の終わりには、自分が担当したバッグを品質管理チームがチェックし、「どこを直したかわからない」とOKを出してくれた瞬間に、ようやく職人としての手応えを感じたと言います。
「納期を守るプレッシャー」と「細部へのこだわり」が生むやりがい
レザーアートでは、創業時から「約束・納期を絶対に守る」文化が徹底されています。Aさんのチームも、毎日かなりの点数を担当しつつ、品質とスピードの両立が必須です。「1点ごとに状態も違うので、毎日が新しい問題集を解いている感覚。時間に追われるプレッシャーはありますが、その分、予定通りに全件を仕上げられた日はものすごい達成感があります」と話します。趣味の模型づくりで培った「最後のひと手間まで妥協しない姿勢」が、ブランドとユーザーの信頼を守る仕事につながっていることが、今の大きなモチベーションになっています。
転職希望者が「応募前に準備しておきたい」具体的なポイント
最後に、同じようにレザーリペア職人を目指す人に向けて、Aさんは次の準備を勧めています。
・プラモデル、ジオラマ、靴磨き、革小物制作などの写真をまとめた簡単なポートフォリオ
・「どこを工夫したか」「失敗からどう改善したか」を説明できるエピソード整理
・単調な作業をコツコツ続けた経験(工場、倉庫、飲食など)の棚卸し
・納期や約束を守るために工夫した仕事の事例
これらはすべて、レザーアートが大切にする「観察力」「粘り強さ」「約束を守る姿勢」を伝える材料になります。趣味レベルの経験でも、伝え方次第で十分に“武器”になることが、Aさんのキャリアストーリーからわかります。