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仕事のこと

「どこを直したか分からない」がゴール。レザーアートの職人ってどんな仕事?

バッグ修理 , ミシン縫製技術 , 品質管理 , 色補修・調色 , 革製品リペア

2026.07.31

朝一番は「持ち込まれた思い出」と向き合うところから

工房の一日は、全国から届くバッグやシューズの開梱作業から始まります。箱を開けると、擦れた角、切れかけた持ち手、色あせた革…。そこにあるのは単なる「壊れたモノ」ではなく、長年使われてきた暮らしの一部です。スタッフはまず受付票と現物を照らし合わせながら、傷み方、素材、縫製の構造をチェック。どの工程をどの順番で進めるか、リペア職人・調色担当・ミシン担当・品質管理それぞれの担当を決めていきます。この段階からすでに「どこを直したか分からない仕上がり」のイメージづくりが始まっています。

リペア職人の仕事:一品ごとに「最適解」を探す

リペア職人は、革の破れ・角擦れ・持ち手のちぎれなど、症状に応じて補強方法を組み立てます。同じブランド、同じ型でも壊れ方は一つひとつ違うため、マニュアル通りにいかないことも多い仕事です。例えば、破れた部分の裏側に芯材を入れて強度を出すのか、ステッチ位置をわずかにずらして縫い直すのかなど、細かな判断が連続します。作業中は、調色担当やミシン担当とも相談しながら、「強度」「見た目」「納期」のバランスを取り、最終的な仕上がりを逆算して進めていきます。

調色担当の仕事:わずかな色差も許さない「色の職人」

色あせやキズの補修で重要になるのが、調色担当の存在です。革の色は、日焼けや使い方によって微妙に変化しており、市販の色をそのまま使ってもまず合いません。そこで、複数の顔料や染料を少しずつ混ぜ、実際の革にのせては乾かし、角度を変えてチェックしながら、限りなく元の色に近づけていきます。光の当たり方やツヤ感まで合わせて初めて「どこを直したか分からない」レベルになります。完成品の印象を左右するため、工房内でも特に集中力が求められるポジションです。

ミシン担当と品質管理:見えない部分こそ丁寧に

ミシン担当は、持ち手の付け替えやファスナー交換、ほつれ補修など、縫製が必要な工程を担います。ミリ単位でステッチ位置を合わせないと、元のデザインバランスが崩れてしまうため、高度な感覚と経験がものをいいます。仕上げ段階では品質管理チームが登場。色むら、縫い目、金具の状態、糸くずの残りまで、チェックリストに沿って細かく点検します。ここでOKが出て初めて、箱詰め・発送の工程へ。技術だけでなく、「約束した納期を守る」ことも重要な仕事の一部です。

「使いたいのに使えない」を「また使える」に変える1日の流れ

ざっくりとした1日の流れは、次のようなイメージです。
1.受け取り・状態チェック:依頼内容を確認しながら症状を診断
2. 作業計画:職人同士で工程と担当を相談・分担
3. リペア・調色・縫製:各専門担当が順にまたは並行して作業を進行
4. 最終仕上げ・品質管理:全体のバランス・強度・美観をチェック
5. 梱包・発送:保護材を丁寧に入れ、箱に収めてお客様のもとへ
箱を閉じる瞬間、「これでまた使ってもらえる」という実感が、何よりのやりがいにつながっています。

未経験から一人前へ:研修とOJTで身につくこと

レザーアートでは、未経験で入社した人も多く活躍しています。入社後は、まず革の種類や道具の扱い方、安全に関する基本を座学と実技で習得。その後は先輩のそばで実物を触りながら、簡単な作業から少しずつ任されていきます。たとえば、最初はクリーニング補助やマスキング、簡単な色補修などからスタートし、徐々に難易度の高いリペアへ。マニュアルだけでなく、「なぜこの方法を選ぶのか」を現場で繰り返し学ぶことで、数年かけて一人前の職人に育っていきます。

この仕事ならではのやりがいと、向いている人

この仕事の魅力は、緊張感のある細かい作業の先に、大きな達成感が待っていることです。新品のようによみがえったバッグを見て、「自分がやった」と胸を張れるのは、職人ならではの喜び。また、修理品の向こうにいるエンドユーザーの「ホッとした顔」を想像できる人ほど、やりがいを感じやすい仕事です。コツコツと集中して手を動かすのが好きな人、細部の違いに気づける人、「ものを長く大切に使う」という考え方に共感できる人には、ぴったりの環境と言えるでしょう。